知の望遠鏡

文系教師と理系研究員の本の紹介を中心としたブログです。

諸々の執着を捨てよう『脱「臆病」入門』

脱「臆病」入門

センター試験です。大寒波の中、己の人生を賭けた戦いに挑む受験生の皆さんは大変ですね。私も10年前はそんな受験生の一人でした。あれから10年が経ち、あの頃は男子高校生だった私も今では28歳のアラサーとなりました。

 有名難関大学に入れば人生安泰‼︎とまでは申しませんが、行く大学によってその後の人生に大きく影響することは間違いないと思います。大学に行くとは、たくさんの選択を同時にすることだからです。優先順位は人それぞれですが、どの大学に入りたいのか?何を学びたいのか?一人暮らしをしたいか?など。自分の願望を成就させるために必死に勉強に励むわけですが、全国の受験生との競争に勝ち抜かねばなりませんからそう簡単にはいきませんね。

 模試の結果に一喜一憂したり、できたと思っても上には上がいてすぐに現実をつきつけられたり、苦手科目をなかなか克服できなかったりと、受験生の苦しみの種は尽きることがありません。

 私も年末頃から二次試験が終わるまでイライラしっぱなしでした。勉強ができないという不安ではなく、「受験に失敗したらどうしよう・・・」という未だ先のことに不安を覚えていました。

 なぜでしょう?

 当時、県外の旧帝大の理学部を志望しており、最新の生物学を学び、都会(街)での悠々自適な一人暮らし、そこでの薔薇色のキャンパスライフを掴んでやる‼︎と躍起になっていたのです。これが、私の受験における勝利条件(達成目標)となっていました。

 すなわち、受験に失敗することはこの願望が一気に足元から瓦解してしまうことを意味していました。自分の思い通りにならなくなることが本当に恐ろしかったのです。そのために必死こいて勉強に励んだ結果、センター試験は上々の出来でして、志望校への道も少しは近くなったように一時の充実感に浸っていました。

 しかし、センターリサーチの結果は残酷でした。私が高得点をマークできたということは同等、それ以上の受験生はごろごろいるということでもありました。冷静になって考えればすぐわかることなのですが、当時はセンター試験が終わった直後で不都合なことは考えたくなかったのかもしれません。結局のところ、志望校の合格判定はそれまでの模試の結果と同じでした。自分の思い通りにいかないことほどイライラすることはないですね。

 さて、私の身の上話はこの辺りにいたしまして、今回は若いお坊さんの書籍を紹介いたします。本を読んだだけで「苦」がなくなるわけではありませんが、無意識のうちに心にかかったバイアスをニュートラルに戻すきっかけにはなると思います。

 仏教での「苦」とは、「自分の思い通りにならないこと=不満足の状態」であると説かれています。本書ではこの「臆病であるという苦しみ」の原因が、「自信不足」、「自意識過剰」、「存在の不安」という心のはたらきにあると言います。この3つの観点を中心にして「苦(本書では臆病)」の原因にアプローチして、その対処法がいくつも紹介されています。ちょっとした空き時間に5、6ページくらい読むのがちょうどいいです。

 「苦」は過去のことに拘っていつまでも考えてしまうこと、未来のことに対して漠然とした不安を抱くことで、「自分の思い通りにいかなかった、あるいは思い通りにならないかもしれない」という不満足感によって生じてしまうのだと思います。つまりは、過去と未来への執着だと思います。

 「今を、ただありのままに生きる。」

シンプルですがこれを実践し続けるのは大変に困難でしょう。もし簡単にできていたら、今や私もブッダになっておりますよ。

  まずは、自然体の自分から離れないような生活改善を少しずつはじめていこうと思います。