何ということだ。あいつは何をしてくれたんだ……厩戸皇子。ー『爆撃 聖徳太子』ー
■茸氏、思わずタイトル買い
『爆撃 聖徳太子』
これは衝撃的すぎますね。
書店で思わず二度見してしまいました、「聖徳太子」と「爆撃」ゼッタイにありえない組み合わせのこれらの言葉。
帯の文句には
とあればこれはもう読まねばならぬと衝動買いしました。
本当、卑怯ですよまったく。
書店の謀略にホイホイとひっかかりました。
■能力者・聖徳太子&スーパーユーティリティプレーヤー小野妹子
東アジアで覇道を突き進む隋帝国に翻弄される朝鮮半島と倭国の戦乱の続く緊迫した古代世界情勢が舞台の本作。
そんな中、倭国を隋帝国の覇道から守るため、太子は隋皇帝・煬帝に喧嘩を売り、とばっちりを受けた小野妹子とともにこの国難に立ち向かうのであった。
・すごく賢いのだけれども変人として描かれている厩戸皇子(聖徳太子)。
別名、聡耳(とみみ)皇子。どんな秘密でもいつのまにか厩戸皇子の耳に
入っている、まさに地獄耳ともいうべき能力の持ち主である。
てっきり、朝廷に籠って権謀術数を巡らすのかと思いきや、倭国、朝鮮、
隋へとあっちこっちを飛び回るイメージぶち壊すほどのアクティブっぷり。
ホント、神出鬼没の行動力です。
・遣隋使 小野妹子。
外交大使ですのでもちろん大和語、朝鮮語、漢語のトライリンガル。
これだけでも十分すごいのに、戦闘行為までやってのけるのだから、
この人すごすぎる。
外交官のイメージしかなかったのに、イメージがガラリと変わりましたね。
本作の主人公です。彼の視点で物語が進展していきます。
本当に厩戸皇子は上司にしたくないような振り回しっぷりをしてきます。
■東アジアを舞台とした古代史小説
厩戸皇子作「日出処天子致書日沒処天子」のフレーズで始まる国書を送りつけられ、隋皇帝の煬帝激おこ。
当時、文明や国力などで明らかに隋に負けていた倭国が隋に喧嘩をふっかけた、普通に考えたら自滅行為にしか見えない暴挙ですが、厩戸皇子の壮大な倭国防衛作戦の重要な布石であったとする本作の解釈には脱帽しました。
確かに、厩戸皇子は変人として描かれていますが、行動原理は倭国(古代日本)を隋の覇道から護ることで一貫しています。
強大な大陸国家帝国に翻弄される周辺弱小国家がどのような生存戦略を取るべきか?
史実に筆者の大胆な発想を織り交ぜた筋書きは、実在が不確かな人物である聖徳太子だからこそ自由に動き回せたのでしょう。
史実の結果は変わらないのだけれど、通説とは違う解釈、発想を見せられるのは本当に楽しいですね。
国と国との戦争の本質とは?人間の本質とは?変人・厩戸皇子が執拗に小野妹子を振り回した意味がそこにありました。
これだから大河ドラマや歴史物はやめられませんね。
変人・厩戸皇子の戦略眼と行動原理、聡耳の力で相手の弱みを握り懐柔してしまう異能の力。
……ん?
どっかで見たことあるぞ。
ルルーシュじゃないか⁉︎
ガンガン周辺国と戦をふっかける皇子!
ほぼ相手を意のままに操る聡耳の力はまさにギアス!
なるほどー、やけに茸氏の嗜好ドストラクだったのはコードギアスと通ずる処があったからか!
これでロボが出てきたら古代版コードギアスでしたね(笑)
いやぁ、古代史をテーマにした小説は面白いですね。
今となっては判らないことが多い空白の部分があるということは、史実という結果に至る筋書きをいくらでも考えることができる余地が豊富であるということ。
そこには色々な要素をブチ込むことがができる、とりわけ古代史においてはSF、異能の力、神や怨霊といったファンタジー要素も使い放題っていうのがいいですね。
「精霊の守人」が大河ファンタジーとして実写ドラマ化したように、本作も実写ドラマ化したら面白いと思うんだ。
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