知の望遠鏡

文系教師と理系研究員の本の紹介を中心としたブログです。

書店探訪、『書縁』を訪ねて。

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 私(茸)は書店に行くのが好きだ。

 

 街に出かけた際に少しの時間があればフラッと書店へと赴く。

特に買いたい本があるわけでもなく、ただ本を探しに行くのである。

街にある大型書店がいい。

 

 書店に入るとすぐ新冊の紙の匂い、インクの匂いとでもいうべきかあの独特の香りが鼻をくすぐる。

 

 書店の静粛な雰囲気の中、膨大な書籍の中から思わず読みたくなるような本を探すべく、ただアテもなく本棚の前を歩いて行くのだ。

 

 書店の良いところは、思わぬところで良本に出会うことである。

 

 お目当の本を探している途中でふと目に入った本に興味が湧くことは少なくない。むしろ、そんな時にこそ良本を発掘できる。

 

 買う前に本を手に取り、パラパラと中身を少しばかり吟味してから買うことができるというシステムが何より良い。

 

 書店には様々な書物の『縁』という糸がたなびいている。

 

「さぁ!私を読め‼︎」と言わんばかりの本が手ぐすね引いて待ち構えているところへ、えいやっと足を踏み入れるのだ。

 

 どの『縁』を引き、良本と出会えるか、そうして引き当てた本が自分にとっての良本、強いては宝典ともいうべき書物になるか、そこに書店探訪の醍醐味があるのである。

 

 もしかすると、書店には本との『縁』結びの神様がいるのではないかと思うことすらある。

 

 昨今、街の書店が相次いで閉店に追い込まれているニュースを聞くにつけ悲しい限りだ。電子書籍やネット通販の代等により、書店は経営難に陥っているのだという。

 

 確かに、電子書籍やネット通販は便利で即時的であるため、私もよく利用する。

 

 しかし、電子書籍などはお目当の本を即時購入する際には便利だが、新しい本に出会う機会はかなり限定的なものだと私は思う。

 

 「あなたへのおすすめ」や「この本を買った人は他にこんな本も買っています」のように、各個人に合わせて色々とリンクをつけてお節介をしてくれ、新しい本に出会う機会を広げてくれているように見える。

 

 だが、これはあくまでも過去の購入履歴やパターンから計算された結果であり、ある意味で予定調和的、ネット書店側が用意したレールをただ辿っているように過ぎないのではないか?

 結局は、自分の趣味嗜好パターンの範疇内で視野や知見を広げる機会が限定されてしまう気がするのだ。

 

 書店でフラフラと物色中に、全く予期せぬ場所で予期せぬ本を見つけるような偶然的な出会いによって、自分の趣味思考の範疇外へ興味の幅を広げることができる絶好の機会ではないか。

 

 そこで掴んだ『書縁』からまた別の『書縁』を手繰り寄せて行くことで、自分の世界は広げることおできる数少ない貴重な場所こそ、(アナログの)書店であるのだ。

 

 勿論、ネット書店や従来の書店の両方ともメリットとデメリットはあり、上手く使い分けていけば良いのだけれども、いかに時代の流れとはいえ従来型の書店が淘汰されて行くのが寂しいのである。

 

 ご近所に中型書店ができることを切望するこの頃である。

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