ヒトという超共生体~10%HUMAN-How Your Body’s Microbes Hold the Key to Health and Happiness.~『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れ始めた』
あけましておめでとうございます。
正月休みは実家で寝正月してました。友人との飲み、普段よりガッツリ食べて、酒飲んでコタツでそのまま寝落ち。そして、然程運動もせずダラダラと過ごした数日間。その結果、カラダに便秘気味、肌荒れなど不調をきたした。人間の健康状態(腸内環境)なんて数日間普段と違う食生活を送るだけでこうもあっさり崩れるものです。
つい先日、NHKの番組で「サピエンス全史」という書籍がベストセラーということで特集が組まれていた。チラッと見ただけだが、このような内容が書かれているという。人類が小麦などの農作物をコントロールしているようでいて、実際には
「人類が小麦に家畜化されている」
というトンデモ説を展開します。
「小麦から見れば、人間を働かせて小麦(という種)を増やさせ、生育範囲を世界中に広げることに成功した」
ん?似たような話をどっかで聞いたことがあるな・・・あ!!
「キルラキル」だ!!人類が生命繊維に支配され餌にされるってやつと同じだ!!
物語中でも一度は人類を餌にしようとサルをヒトに進化させた生命繊維だが、最後は反抗されて返り討ちに合いました。そ、生態系での一方的支配は長くは続かない、持ちつ持たれつのバランスが大事。食物連鎖の頂にいる捕食者も死んだらバクテリアなどの餌となり土へと還理、次の命を繋ぐ糧となる。これが食物連鎖で、生態系というシステム。
かくいう我々ヒトも複雑な生態系を宿した存在(マイクロバイオーム:microbiome)なのだ。すっかり前置きが長くなってしまったが、ここからが本題。
要は、我々が健康でいるためには己に棲まう微生物たちと上手に協力しないとならないということ。本書を読む上で私が面白いと思ったポイントを抜粋して見たので、興味が湧いたら読んで見てほしい。
*ヒトも微生物と共生する細胞集団(超共生体)
ヒト(宿主)に棲まう(寄生or共生する)微生物たちの総称をマイクロバイオータという。ヒトの持つ遺伝子はたった2万ちょいであるのに対し、マイクロバイオータの持つ遺伝子は40万を超える。
*めんどくさい仕事(代謝)はアウトソーシング
ヒトの持つたった2万ちょいの遺伝子だけではヒトの生命活動を支えるだけの代謝をカバーしきれない。そこで、マイクロバイオータに住みかを提供する代わりに、特定の代謝を外注するよう進化してきた。そうすることで、宿主自体が持つ遺伝子は少なくて済む。ヒトで言えば、腸内細菌による摂取した食物からのビタミン類の合成など。宿主にとって利益となる働きをしてくれる微生物が所謂、有用微生物であり、特定の種に固定される訳ではなく、宿主の望む働きさえすれば良い。ということは、利害の一致する有用細菌群を保持した個体は生存に有利であり、そのような有用細菌群を子孫に継承する戦略をとる種が優位となり、実際、それらは遺伝する。
*大量殺戮兵器 抗生物質の光と陰
感染症の特効薬、まさに命を救う薬の抗生物質。その性質上、標的病原菌以外の似たような有用細菌まで殺戮する一面もある。使い方を誤ると、有用細菌が死滅した空白地帯に別の有害細菌が定着すると、重篤な消化器疾患などを発症することがある。
*21世紀病の出現と対応
先進諸国で急増している、肥満、Ⅰ型糖尿病、自己免疫疾患、アレルギーといった免疫系疾患、過敏性腸症候群、自閉症、うつ病などの疾患とマイクロバイオータの組成変化に関係があることが近年の研究で明らかになりつつある。
*マイクロバイオータの母性遺伝
人間の場合。子宮の中にいる胎児は無菌状態。羊膜を破り産道を通り生まれてくる時に、母親から有用細菌の移植がなされる。有用細菌の新生児への入植というべきか、母親によって選ばれたエリート細菌が新生児の腸や表皮へ入植する。母親と良い関係を構築している細菌は、ゲノムがほとんど同じ我が子とっても有用であり、病原性細菌の定着を防ぐことでもある。しかも、母乳には新生児の栄養分の他に、そうした細菌や彼らの餌となる成分まで入っており、新生児の腸内に確実に有用細菌を定着させようとしているのだから驚きだ。母はやっぱり偉大だ。ミトコンドリア母性遺伝と同じだ。
ミトコンドリアや葉緑体の内部共生によって真核生物に進化した。その内部共生体を有する多細胞生物は、その個体を維持存続、繁栄するためにそこらの細菌と手を組むことで、より複雑な生物種へと進化した。このマイクロバイオータとの関係は“細胞外共生=細胞間共進化”といっても良いと思う。