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知の望遠鏡

文系教師と理系研究員の本の紹介を中心としたブログです。

平清盛無くして、武士の世は来なかった。ー「謎解き平清盛」ー

謎とき平清盛 (文春新書)

 

 みなさんの一番好きな大河ドラマは何でしょう?

私は「平清盛」(2012年)です。昨年の「真田丸」も面白く好きな作品の1つではあるのですが、清盛はぶっちぎりで私の中で最高峰の作品なのです。

 聞けばCS銀河というチャンネルで大河ドラマ平清盛」の再放送が2月から始まるとのこと。まだ観てない人は是非観ていただきたい‼︎真田丸を楽しめた人、漫画やゲーム、アニメ、舞台が好きな人は絶対ハマるから‼︎

おいでよ!清盛の沼(^ω^)

 初めは平家物語で語られる諸行無常、平家の栄枯盛衰をどう描いていくのかが気になって見始め他のですが、初回から心を鷲掴みにされました。

 初回冒頭で平家滅亡の報を聞く頼朝という壮大なネタバレ、源氏勢は歓喜する中、頼朝は一喝する「平清盛なくして武士の世は来なかった‼︎」と。こいつ平家から見れば劇中では敵だけども、もしかしていいやつなんじゃないかと思ってしまう。その頼朝が清盛について回想語りをするという構成。そして、ピアノの旋律で始まるメインテーマ。OP映像もプレステのRPGやアニメを連想させるような感じです。

 これにはFF10の冒頭を思い出しましたね。

ティーダ「最後かもしれないだろ・・・だから全部話しておきたいんだ。」→テーマ曲「ザナルカンドにて」のピアノ曲の流れに重なります。

 ドラマ本編に入ると初回だというのに、上皇、帝、藤原摂関家、貴族、源平の武士、民、盗賊など様々な人々が一気に登場します。

映像、音楽、質感、役者の演技、演出、脚本と台詞回し、諸行無常、栄枯盛衰の中で受け継がれゆく意志や想い、平安末期の世界観にどっぷりと没入できる濃密な45分間が1年間もあったなんて、今になって思えば贅沢なことでした。

 「平清盛」を観終わってから清盛に対するイメージがガラリと変わりました。

彼は閉塞した古代の日本・貴族社会から「自立」し、「武士が頂きに立つ世」を実現させるために武士の可能性を世に示し、中世日本を切り開いたパイオニアであったのだと。それまでは、一般的な「傲る平氏は久しからず」や「平家にあらずんば人にあらず」に評されるような悪のイメージを清盛はじめ平氏一門に抱いていましたが・・・

 さて、ドラマ紹介はこの辺りにしまして本題へ。

 先日、ツタヤで古本の物色をしておりましたところ、大河ドラマ平清盛」の時代考証をしていた本郷和人氏の清盛本を見つけたので衝動買いしました。

 ドラマを観た人にとっては清盛のことをより深く識るために、未だ観てない人でも清盛が生きた激動の時代を識ることのできる良き解説書ですので、是非ご一読を‼︎

 大河ドラマ時代考証にあたり、本郷氏はこのようなスタンスで考証したとのこと。

知性と良心をもって、歴史(史実や人物像など)を復元する。それが歴史学である。

いやぁ、カッコいいですですね。インテリとはかくもこうありたいものです。

 私は理系出身ですので、あまり文系の研究手法については心得がないのですが、日本史学の作法が説明されていまして、なかなかに面白いと思いました。

・歴史を復元する日本史学の作法:「史実→史像→史論」の3ステップ

(1)複数の歴史的資料を正確に読み込み、確度の高い「史実」を復元する。

(2)複数の「史実」を組み合わせて、歴史的解釈「史像」を構築する。

(3)複数の「史像」を整合的にまとめ上げて「史論」を形成する。

 この史論が重要で、個別の研究結果をその時代の史論に照らし合わせることで、その時代性についても語れるようにするとのこと。

 文理の違いはあれども、研究という学問においてはその手法はやはり同じものなのだなと再認識しました。

さて、本書での清盛のプロファイリングをまとめてみました。

平氏の本質は武士であり、貴族にあらず。徹底した「異質な人」
 平家一門を力強く率いて、伝統や格式が重視される貴族社会の中で出世していった清盛の存在は、まさに「異質」である。当時、そんな人物は彼以外にいない。


②よく「学ぶ人」
 自らが異質な存在であることを自覚していたからこそ、貴族と互角に渡り合えるに相応しい伝統・観念、そして他者の振る舞いを学ぶ。平治の乱以後はあちらこちらの勢力にも気配りをしながら自らの身の処し方を変えていった。

③自己制御能力(忍耐力)の高い人
 平氏の棟梁として飛び抜けた武力を持っていたにも関わらず、晩年の治承三年の政変でのクーデーターを起こすまでその軍事力を行使することはなかった。彼の立場であればたやすく武力行使はできたはずだが。朝廷のやり方に自分を適合させ、貴族たちの顔を立てつつ、伝統の枠組みの中で振る舞った。


④日本の中世のフィクサー
 武力の統括者が古代国家(朝廷・貴族社会)とどれだ戦えるか、武力の有効性について身を以て示したのが清盛であった。清盛の生き様に学んだ頼朝は、鎌倉に武家政権を打ち立て、以後700年続く武士の世を築くのである。

 清盛は圧倒的武力を持ちつつも、貴族社会の枠組みの中で出世し、確実に力をつけていきます。
 そして、保元の乱あたりまでは「朝廷の軍事力」でしかなかった平家ですが、その後の平治の乱では各勢力(朝廷、貴族)から最大の兵力を有する清盛との連携が渇望されるまでになります。
 清盛自身があざとく欲したのではなく、武門を超えた働きを周囲から期待されるようになっていた。以前は上皇天皇の綸旨なしに動くことはできない「朝廷の軍事力」でしかなかった平家は、自ら考え、高度に政治的な判断を下すことのできる存在へとレベルアップしていた。このあたりで、「武士が頂きに立つ世」の準備が整ったのではないかと思います。

最後に私が清盛が偉大だと思うこと。


①強力な武力でもって、貴族社会秩序を破壊しなかった。世の秩序を武力で破壊 し、政権交代を為そうとはしなかったこと。清盛と似たような武人である織田信長は、その武力でもって旧体制・秩序を片っ端から破壊しましたが・・・その反動なのか、信長は明智光秀の謀反により道半ばで死去してしまいます。清盛は改革者にしては珍しく畳の上で亡くなっています。

上皇天皇・貴族たちと同じ土俵に立てるまで、貴族社会に従順に従い力をつけていき、ついには貴族社会に追いつき、そして追い越すことでかつては「朝廷の軍事力」でしかなかった平家(武門)を、「平家の軍事力無くして、政を遂行できない」状況へ平家(武門)と貴族の立場を逆転させたこと。彼は「貴族に使役される武力」からの解放者でもあったのだと思います。
 
 長くなってきたのでこの辺にしておきます。

平清盛という人物、ものすごく魅力的な男に違いないと思います。
そうでなければ、武家と公家の中を渡り歩き、朝廷貴族社会の中で栄達を極めることはできなかったと思うからです。
 

ザナルカンドにて

ザナルカンドにて