知の望遠鏡

文系教師と理系研究員の本の紹介を中心としたブログです。

哲学を学ぶには『Century books―人と思想』シリーズがおすすめ!

キルケゴール (センチュリーブックス 人と思想 19)

教員になってから、倫理という科目を教えなければならなくなった。

専門的には、本当は世界史を教えたかったのだが、人が足りないというからしょうがない。社会科という教科は、結局オールマイティーにできなければならないのだ。

(今や地理・世界史・日本史・政治経済と何でもやらされている便利屋さんである)

 

倫理というのは、簡単に行ってしまえば哲学の歴史を学ぶ科目だ。

学生時代は全く縁がなかった科目で、勉強したこともなかったから一から勉強しなければならず、非常に大変であった。教える内容は、指導書・参考書の類を見ればわかるのだが、結局それでは教科書をなぞるだけで、面白くない。

「10教えるために100を知り、100を教えず10を教える」ことが授業の鉄則だと自分は思っている。

 

ゆえに、どのように周辺知識を深めていくか。

「これでわかる」系のダイジェスト本みたいなものも読んだ(これに関しては、また別の機会に紹介したい)。

それだけではやっぱり足りない。

 

そこで、発見したのが今回紹介する清水書院から出ている「Centurybooks人と思想」シリーズだ。

これは、著名な哲学者を人物ごとに焦点に当てて編集されている。

その人物にまつわる有名なエピソードがいろいろとまとめてあって非常に使い勝手が良い。

思想内容も、その道の専門家によって簡潔にわかりやすくまとめてある。

ほとんどハズレがないのが素晴らしい。

そんなに分厚くなくてサッと読めるのも良い。

あえて難点を上げるとすれば、本の規格が新書とも文庫とも言えない微妙なサイズ感で、ブックカバーとかが合わないぐらいだ。

ダイジェスト本みたいのを読んで、興味を持った哲学者が出てきたら、このシリーズから選んで読んでみると良いだろう。

 

ちなみに今回例として取り上げた『キルケゴール』だが、僕の好きな哲学者の一人だ。

実存主義の先駆者と言われるが、僕に言わせれば彼は「哲学界の絶望先生」だ。

基本的に豆腐メンタルで、とにかくいつも絶望してるし、あとロリ◯ンという救いようのない性癖の持ち主である。

そんな彼のエピソードが「真面目」に語られているのが、本書の面白いところだ。

 

生徒に言っていることだが、哲学者だって我々と同じいろんなことに悩み苦しむ人間なのだ。

ただの偉人の話と考えるんじゃなく、等身大の同じ人間として捉えることが大事だ。

まるで自分の「友達」のように、その哲学者のことが語れれば最高だ。

「あいつっってこんなところがあるんだぜ!」みたいに。

 

哲学者を知って、哲学者と「友達」になろう!

ちょっとめんどくさい奴らだけど、哲学者たちも君たちのことを待っていますよ?