知の望遠鏡

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恐竜は鳥か?鳥は恐竜か?「鳥類学者 無謀にも 恐竜を語る」

 

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)

 

 

恐竜のイメージをぶっ壊してくれた一冊。

 

恐竜といえば、映画「ジュラシック・パーク」に出てくるような、すばしっこく動き回るヴェロキラプトル、猛スピードで襲いかかってくる凶悪なティラノサウルス、他にもゲーム「モンハン」に登場するような造形を想像すると思う。

 

茸氏の恐竜に対するイメージも上述の通りであった。

 

本書を読むまでは。

 

最近の研究成果によると、今までの恐竜の常識が随分と様変わりしているようだ。

 

本書は鳥類学者である著者が、

「鳥類は恐竜の一グループから進化した=鳥類は恐竜だ」

という前提に立ち、現生する鳥類の生態から恐竜についてあれこれ考察している。

 

考察の仕方がユニークに富んでいて読むのが楽しい。

軽快な語り口、ちょくちょく小ネタを挟みつつ、無駄知識を突っ込んでくるユーモアが良い!

例えば、大型草食恐竜の群れをモビルスーツ一個大隊と喩えている。

 

さて、恐竜化石の研究結果と現生鳥類の生態から考察される塗り替えられた恐竜像はというと

①羽毛を纏った恐竜は意外に多かったっぽい

・始祖鳥や現生鳥類に繋がる、やがては飛行に特化してったグループ

 →これはよく図鑑や教科書で載っているのでお馴染みかと

・飛行には特化せず、保温やディスプレイ用に羽毛を纏ったグループ(孔雀の飾り

 羽みたいなもの) 求愛や威嚇等のディスプレイに用いるため、これらの羽はカラフルであった可能性が高い!地味な色の鱗の体表ではなく、カラフルな羽毛を纏ったモフモフ恐竜だったぽい

→書店で恐竜の最新図鑑を開くと、ティラノサウルスが羽毛を纏ってモフモフでした

 

恐竜の歩き方は首振り歩き

映画やゲームで観るような二足歩行でカッコよく走る恐竜!

しかし実際は・・・

ハトが首を前後に振りながら歩く、若しくは、スズメがホッピングしながら歩くような歩き方をしていた可能性が高い!

 

「鳥類は恐竜の一グループから進化した=鳥類は恐竜だ」という前提に立てば、鳥類の形質は祖先である恐竜にも共通であると考えられるため、当然恐竜の歩行形態も鳥類のそれと同じであった可能性が高く、従って、凶悪肉食恐竜のティラノサウルスヴェロキラプトルもハトポッポの如く首を前後に忙しく振りながら大地を闊歩していたのだ!

 

ほんと、カッコイイ肉食恐竜のイメージぶち壊しである。

 

さえずる恐竜、されど咆哮はせず

図体の大きい恐竜だが、広い大地の上でパートナーを見つけるのは困難である。

パートナーを見つけるためには己の存在を知らしめる必要がある。

 

では、どうするか?

 

鳥類では、囀りや甲高く鳴くことで異性に己の存在を知らせる。

異性の視界に入れば飾り羽をこれでもかと見せつけての必死のアピールを敢行するのである。

美しい声で囀るもの、ド派手な羽を見せつけるもの、華麗なダンスを見せるのもなど様々である。

 

②と同様、恐竜の求愛行動もこれに似たものではないかと考えられる。

また、頭骨の形態から鳴くことはできたらしいということはわかっている。

ただし、威勢良くガオーッ!!と咆哮することはできなかったようだ。

で、遠くにいる異性に己が存在を知らせるために発する鳴き声はなんと

 

プープー   

ピィーピィー

 

というものだったらしいのだ!

なんとも拍子抜けの鳴き声だがこれにはちゃんとした推察があるのだが割愛、詳細は本書で。

 

 

日々常識が変化していく科学研究の分野はこれだから面白い!

もう10年すると恐竜の常識はまたさらに違ったものになっているだろう。

 

「鳥類は恐竜の一グループから進化した=鳥類は恐竜だ」

 

なるほど、飛行に特化した恐竜の子孫が鳥類であると。

 

そう考えると、我々の身の回りには空飛ぶ恐竜たちで溢れているということだ。

 

 

別件ですが、恐竜図鑑の横にカンブリアンモンスター図鑑があり、パラパラ見ていて驚いた。

  

 

「歯の生えた謎」の名を冠するオドントグリフスが茸氏が知る限りにおいては遊泳型のまさに泳ぐ洗濯板であったのだが、最新研究によると水底で藻類をこそぎ取りながら這い回るナメクジの様な軟体動物であることが明らかになったという。

 

茸氏のオドントグリフスについての知識が20年ぶりにアップデートされたのだが、さすがにショックだった。

 

真実とは常に残酷であることよ。