知の望遠鏡

文系教師と理系研究員の本の紹介を中心としたブログです。

本の紹介

マキャベリズムからノブレス・オブリージュへ『戦場の精神史』

皆さんは、武士道という言葉を聞いたとき、どのようなイメージを描くであろうか。 正義。 名誉。 忠義。 などなど、おそらく、「義を何よりも重んじて主君に忠誠を尽くす」を想像する人が多いと思われる。しかし、このような美しき武士の姿は、幻想でしかな…

40億年の時を動き続けるエネルギー産生機関、それが生命~「Why is Life the way it is?(邦題:生命、エネルギー、進化)」~

生物学は現実の生物が「なぜ(Why)」そして「どのように(How)」どのように進化してきたのかを明らかにする学問だ。なので、理論的にエレガントであることよりも、現実の生物の在りようを上手く説明できる価値観が大切だと思う。 生命の本質は何か?進化の…

「中国人」とは一体何なのか『紫禁城の栄光』

私は、三国志が好きだ。 義に暑い漢たちのとても格好いい生き様。 私も、そのようにありたいと思ったものだ。 しかし、三国志に登場した「中国人」たちは、今存在しているのか? その答えは、NOだ。(かすかに血が残っていればいい程度であろう) なぜならば…

相反する2つのベクトルで駆動する幸運を蓄積するシステム〜生命というオートマタ(自動機械)〜 『生命のからくり』

生命進化に関する考え方も様々である。前回に続いて生命進化に関する1冊。今回は、情報蓄積システムとしての生物進化だ。 正直、本書で述べられている考え方は非常に衝撃を受けた。生命を『情報を蓄積する動的システム』として捉えている点である。 生命は矛…

烏帽子じゃないから恥ずかしくないもん『殴り合う貴族たち』

『真田丸』が最終回を迎えた。視聴率は、最近の大河ドラマには珍しく、高視聴率をキープしていたようだ。一方、低視聴率に連発した大河があった。・・・それは、4年前の『平清盛』である。しかし、私は、『平清盛』が…大好きなのだ! 『真田丸』も、もちろ…

地球の熱エネルギーが私たち生命を創った⁉︎ 『生命誕生〜地球史から読み解く新しい生命像〜』

何故我々は存在しているのか?その理由を探求するのが哲学・宗教である。この分野については介氏にお任せするとしよう。 対して、如何にして我々は今ここに生きるに至っているのか?を説明するのが科学である。宇宙の成り立ち、宇宙の法則を解き明かすのが宇…

史上最強の赤ペン先生『雍正帝』

教師の仕事についてからというもの、赤ペンの消費量が異常に早くなった。採点はもちろんのこと、毎日提出される学習記録帳なるものにコメントを返してあげなければならない。勉強した時間や内容や、一日の反省。真面目に書く生徒もいれば、他愛もない世間話…

生きるためのスクラップアンドビルドシステム『細胞が自分を食べる オートファジーの謎』

今年、大隈良典博士が『オートファジー』の研究によりノーベル生理医学賞を受賞した。大学生の頃に細胞質中の不要なタンパク質等を分解するシステム程度にサラッと学んだ程度であった。折角の機会である、今一度、概要を学んでみようとこの本を手に取った。…

家族の相対化する『社会人類学-アジア諸社会の考察-』

教師をしていると、様々な家族のあり方があることに驚かされる。自分の家族が当たり前だと思っていたが、世の中には家族の数だけ家族の形があるのだと。その違いに四苦八苦する毎日だといっていい。 そんな中、この本を思い出した。大学時代にレポートで読ん…